片頭痛でお悩みの場合、顎関節症と関連している可能性があります。顎関節症はアゴの位置がずれて隣接する筋肉にストレスがかかり、片頭痛を引き起こす可能性があります。症状としては、食いしばり、アゴの痛み、顎関節の片側または両側の圧痛、こわばり、または閉口ロックが含まれ、口の開閉が困難になります。
コロナ禍で増加した片頭痛と顎関節症
治療には身体的および行動的アプローチがあります。痛み止め、理学療法、カイロプラクティック ケア、ボトックス、リラクゼーション セラピー、ストレス管理のカウンセリングなどを含みます。
新型コロナウイルス感染症は、顎関節症と片頭痛の増加につながりました。ストレスの増加とパソコンやスマートフォンのモニターを眺めている時間の増加が大きな原因です。姿勢の悪化が食いしばりの増加につながった可能性があります。

アンドレア・ピアクワディオさんのケース
2005 年に子宮内膜症の手術を受け、最終的に子宮の全摘手術を行った後、片頭痛の周期が長期間にわたり悪化しました。また、異常な左右のアゴの痛みが徐々に生じて悪化しました。不快感も増し、開口制限が徐々に進みました。最終的には口を大きく開けて食べるのが難しくなり、あくびも苦痛になりました。かかりつけのカイロプラクター、Dr.レスリー・ランゲが顎関節症に対してアゴの内側 (口腔内筋膜リリース) と外側の治療を行ってくれました。事実、効果的な処置でしたが、最終的にMRI撮影を受け重度の顎関節機能不全と脱臼を診断されました。
2008年に頭痛の専門家、Dr.ジョセフ・マンは、手術と悪化する片頭痛、それに続く私の顎の問題との関係を明らかにしました。
私は自分の歯に関しても多くの問題を経験し、歯ぎしりや食いしばりによる慢性的な問題を抱えていました。ナイトガード(夜間に装着するマウスピース)を試した後、最終的には取り外し可能なオールメタルのデバイスを装着しました。
慢性片頭痛に対してはボトックス注射を受けていましたが、Dr.マンは更に咬筋と左右の側頭筋への注射も開始しました。この処置もある程度の効果がありました。
外科手術だけでは治まらない顎関節症
2014年、Dr.マンは米国頭痛学会の会議でDr.ハワード・イスラエルによる新しい顎関節症の外科手術についてのプレゼンテーションに参加しました。Dr.マンは私がこの新手術のボランティア患者として手を挙げるように勧めました。そして、私は2015 年にDr.イスラエルの手術を受けました。
手術は無事、成功しましたが、 (以前ほどではありませんが)私はまだ顎関節症に苦しんでいました。かみ合わせの問題ではなく、心理的な理由から歯ぎしりや食いしばりの癖があり、Dr.ランゲの診察とボトックス注射を受けています。これらの経験から、顎関節症と片頭痛の間には明確な関連があるといえます。
顎関節症とは何ですか?それは片頭痛にどのように影響しますか?
片頭痛救済センターは次のように説明しています。
「顎関節(TMJ)は、下顎骨を頭蓋骨に接続する蝶番関節で、会話、あくび、食事の際に必要な分だけ下顎骨を動かすことができます。顎関節は、喉もとにある舌骨筋によっても支持され胸部とも関わっています。また、頬や頭頂部や側頭部の筋肉や腱によって肩の筋肉ともつながっています。かみ合わせに問題が借る咬合不全の患者では、アゴがずれている可能性があり、顎関節や咀嚼筋に負担がかかります。顔面や頭部の筋肉が過剰に緊張すると、患者は片頭痛の発作を起こす可能性があります…」
顎関節症と片頭痛: 関連性とは
「片頭痛患者は、刺激に反応して化学物質を生成する三叉神経の障害に苦しみます。神経は通常、自身を保護する必要性を感じたときにのみ反応しますが、神経が興奮すると、放出された化学物質が脳と副鼻腔の周りに腫脹(腫れ)を引き起こし、片頭痛の痛みを引き起こす可能性があります。片頭痛が頻繁に起こる場合は、三叉神経が通常よりも低い刺激に反応している可能性があります。睡眠中やその他の時間に歯や顎を異常に食いしばっていると、三叉神経系に影響を及ぼし片頭痛を起こしやすくなります」(2017)。
ただし、因果関係を考える際には注意が必要です。疼痛センターの頭痛と口腔顔面痛のプログラムのディレクターである口腔外科医のDr.スティーブン・B・グラフ・ラドフォードは次のように述べています。
「顎関節症と関連する顔と口の構造は、片頭痛の引き金または持続要因と見なされるべきです。科学的研究により、頭から顎関節へ、およびその逆への痛みの伝達経路とメカニズムが証明されています。頭痛は顎関節の構造に起因する場合もあれば、一次性頭痛の診断に続いて顎関節に起因する場合もあります。この両方が起こっているか、あるいは、治療反応に基づいているため、問題を混同して因果関係を示唆しないことが不可欠です」
顎関節症の症状とは?
Migraine Relief Center は、実際に頭痛を感じていなくても、顎関節症が片頭痛の引き金になっている可能性があることを示唆しています。
顎を食いしばったり、歯ぎしりをしたりという自覚がない場合でも、正当な理由なく上下の歯が当たっていたり閉じていたりすることはパラファンクションと呼ばれます。経験するパラファンクションの量と強さは、片頭痛の発症に関係があります。
症状の例
・顎関節または顎関節の一方または両方の痛みと圧痛
・片耳または両耳の中および耳周辺の痛み
・話したり食べたりしているときの顔のこわばりや顔面痛
・関節の硬直またはロック感
・口の開閉が困難
・噛んだり話したりする際にアゴを動かすと、痛みを伴うカチカチという音や耳障りな音がする
顎関節症と片頭痛はどちらもストレス、不安症、うつ病によって引き起こされることが多いため、次のような治療法があります。
顎関節症と片頭痛;治療の選択肢
・三環系抗うつ薬(痛みとうつ病の両方を和らげる二重の効果)
・理学療法
・カイロプラクティックケア
・マッサージ療法
・ストレスマネジメントのカウンセリング。
・ボトックス
・バイオフィードバック
・鍼
・リラクゼーションセラピー・エクササイズ
・コルチコステロイド注射
・外傷に関する顎関節の手術
ハーバード大学医師による解説
ハーバード大学医学部の医師で神経学准教授のDr.ポールGマシューは、次のように主張しています。
「顎関節症を治療することで、隣接する筋肉群のバランスが改善する可能性があります。顎関節症や首の痛みと緊張が改善すると、片頭痛の頻度と強度も改善する傾向があるため、理学療法は姿勢と人間工学的問題に対処する上で非常に役立ちます」
Dr.マシューはさらに、患者にボトックスを使用する頻度について次のように報告しています。顎関節症は、私の頭痛の診療において非常に一般的です」顎関節症の機能不全と片頭痛との関係は確かであり、この併存症はコロナ禍の今日において、より顕著です。
歯科的なアプローチは?
コロナ禍の間の顎関節症と片頭痛についてもっと心配すべきですか?
コロナ危機の間、歯科医はこれまで以上に忙しくしています。口腔外科医のDr.タミー・チェンは、最近の記事「A Dentist Sees More Cracked Teeth: What’s Going On」の中で、「私は過去 6 年間よりもこの 6 週間でより多くの歯根破折を見てきました」と述べています。彼女は、3 月の診療(緊急時を除く)をまとめて、「顎の痛み、歯の知覚過敏、頬の痛み、片頭痛」に関する問い合わせが大幅に増えていることにすぐに気付いたと語っています。診療中断後、6 月に診療を再開した後、彼女は歯の破折が急増し「少なくとも 1 日に 1 回、オフィスにいる間は 1 日おきに相談を受けました」と述べています。
顎関節や歯に関連する問題のこの増加の寄与要因には、食いしばりやブラキシズム (歯ぎしり)やにつながるストレスの増加、在宅勤務やコンピューターでの作業時間が大幅に増加したことに伴う姿勢の悪化が含まれます。Dr.チェンによると、「純粋な真実は、日中の姿勢が悪いと夜になるとかみ合わせの問題につながる可能性があるということです。コロナウイルス感染拡大のストレスのために、心身が戦闘準備が整った覚醒状態を続けます。その緊張によって歯に負担がかかるのです。」歯ぎしりや食いしばりをすると、顎関節症や片頭痛につながりやすいということを覚えておきましょう。
これらの問題を解決するために何ができますか?
私の経験上、食いしばり癖は一度定着すると、防ぐことも止めることも困難です。1 日のうちどれくらいの時間、またはどの活動中に食いしばっているのかを意識しましょう。食事の際を除いて、上下の歯は決して触れてはいけません。先述の症状のいずれを発症した場合、上下の歯の接触頻度に自分でも驚くはずです。舌は上アゴの天井につけ、上下の歯を少し離すようにしてください。
ナイトガード(夜間に装着するマウスピース)は、特に歯科医があなたのアゴに合わせてデザインしている場合は効果的です。少なくとも、それらは骨折、欠けた歯、およびエナメル質のさらなる侵食を防ぎます。特に、コンピューターの前に座って食いしばりをしている人は日中も着用することも検討してください。
この記事を読み終えたら、自分の姿勢と顎の状態をセルフチェックしてください。両方を一貫して行うことで、症状の軽減や顎関節症の予防に役立つ可能性があり、片頭痛にも役立つ可能性があります。
〔※編集注:この記事は情報提供を目的としたものであり、医学的アドバイスではありません。個別のケースにつきましては医師にご相談ください。〕
引用元
https://www.psychologytoday.com/ca/blog/so-much-more-headache/202103/the-connection-between-tmj-dysfunction-and-migraine
監修・まとめ
藤原 邦康
カイロプラクティック・オフィス オレア成城 院長
米国公認ドクター・オブ・カイロプラクティック
一般社団法人日本整顎協会 理事
カリフォルニア州立大学卒業
カリフォルニア州立大学(映画専攻)卒業後、CG映像の制作に携わった後、米国ライフウェスト・カイロプラクティック大学へ転進。2004年 米国ライフウェスト・カイロプラクティック・カレッジ卒業2006年 カイロプラクティック・オフィス「オレア成城」開院。2016年日本整顎協会設立。
顎関節症に苦しむアゴ難民の救済活動に尽力。噛み合わせと瞬発力の観点からJリーガーや五輪選手などプロアスリートのコンディショニングを行なっている。格闘家や芸能人のクライアントも多数。
【メディア取材】
「あさイチ」(NHK)、「とくダネ!」(フジテレビ)、「Tarzan」(マガジンハウス)、「からだにいいこと」(祥伝社)、「日刊SPA!」( 扶桑社)、「おはスタ」(テレビ東京)ほか
【執筆】
サライ(小学館)
「自分で治す!顎関節症」(洋泉社)Amazonベストセラー1位
「体の理を生かすカイロプラクティック」(科学新聞社)