
前回は、歯ぎしりに対する思い込みや誤解について解説しました。今回は改善法について説明しましょう。
十分な睡眠
人によっては不安なときにアルコールをよく飲む傾向がありますが、軽度のアルコール摂取でも首の筋肉の弛緩させます。すると、歯ぎしりの力と持続時間を増加させ気流を回復させている可能性があります。
歯ぎしりを増加させる可能性のある他の要因として睡眠の質や姿勢の悪さも挙げられます。眠りが浅かったり寝つきが悪かったりする場合はノンレム睡眠に多くの時間が費やされます。人はノンレム睡眠のときに無意識に歯ぎしりをするのです。歯ぎしりはストレスによって引き起こされる可能性がありますが、カフェインを取り過ぎたりスマホ片手に寝たりするときなどにも起こります。
睡眠中の姿勢の習慣も歯ぎしりに大きく関ります。起きているときに緊張して食いしばっている人は、眠っているときも同様に食いしばっている可能性がありますしリラックスするまで時間がかかります。猫背になり、整形外科的に不適切な「C」カーブを形成された状態でスマホや端末を長時間操作する現代人は、後頭部や首、背中がこわばっているため、この傾向がよく当てはまります。
舌位(ぜつい)の重要性
結局、問題は歯ぎしりしているかよりも、なぜ過剰に歯ぎしりしてしまいアゴや歯の問題まで引き起こしているのかです。
「歯ぎしりは病気ではありません」と、歯科医でモントリオール大学の神経科学者であるギルス・ラヴィーン教授は述べています。「歯ぎしりは単なる習性であり、他の習性と同様に、過剰なレベルに達したとき、誰に相談すべきかです。」
例えば、理学療法士ならアゴをリラックスさせ正しく腹式呼吸をする方法を教えてくれるでしょう。また、心理学者なら、就寝前の食べ過ぎ、ワインやウイスキーの飲みすぎなど、過度な歯ぎしりにつながる行動を改善するのを助けてくれるかもしれません。
簡単なのは、一日を通して口、舌、歯の位置を簡単に認知することで、これらの認知が歯ぎしりを防ぐのに大いに役立つ可能性があります。ペンシルベニア州の理学療法士で、歯ぎしりの患者を治療しているシェリル・コッカは「患者さんは休んでいるときに舌がどこにあるのか全く分かっていない」と述べています。
口を閉じて舌を口の天井に付け、上下の歯を離した状態で、鼻呼吸していることを継続的に確認するように彼女はアドバイスしています。タイマーやメール通知などでリマインダー設定をするとか、例えば赤信号で停止したタイミングに意識づけをするなどするのもオススメです。
食習慣
歯ぎしりの原因は現代の食生活にあるかもしれません。農業革命や産業革命を経て、加工されて噛みやすい食品を食べ始めてから、私たち人間は先祖よりもアゴが小さくなり口腔顔面の筋肉が発達しなくなったという、異論とわれていた説を支持する証拠が増えています。口呼吸や低位舌傾向が増えていると研究者は述べています。
ニューヨークの補綴歯科医で歯根破折について記しているDr.タミー・チェンは「地下鉄やバスの乗客を見ると、皆スマホを操作していて、口を少し開けて息を吸ったり吐いたりしている。特に子供たち、みんなそうです。」と語っています。「口が開けば舌は瞬時に下がります。本来、舌は常に口の上と前方に押し上げておく必要があります」これにより顔と首の筋肉が強化されて顎が広がり気道が開きます。
試してみよう!
祖先のように夜に地面に寝転がるのではなく、柔らかい枕やマットレスを好む現代人は、口が開きやすくなるため、口腔の渇きや酸性化、微生物叢につながります。そして、首の筋肉のたるみや気道閉塞が起こりやすくなります。
固い枕または折り畳んだ毛布に頭を載せれば、口腔顔面、首、気道のストレッチや強化の手助けになります。理学療法士のシェリルは「キスを迫ってくる人から顔を引っ込めようとする」ような動作によって、アゴが喉元に触れるまで頭を後方に引いて首の上に戻す運動を毎日繰り返すことをお勧めします。
他のおすすめのエクササイズとしては、左右の肩甲骨を中心に引き寄せて保持することや手をドア枠にかけて寄りかかり胸を開くことなどが挙げられます。
研究によると、腹式呼吸と歌唱は気道の筋肉を強化し拡張して、いびきや歯ぎしりを減らす効果を期待できます。
マウスピース
Dr.チェンによると、日中または夜間に着用するバイトガード(マウスピース)は、歯ぎしりを妨ぐことはできませんが、歯を保護するためのクッションとして機能します。ただし、口のサイズと形状、およびグラインダー(歯をすり合わせる人)、クレンチャー(グッと食いしばる人)、チョッパー(歯をカチカチ鳴らす人)などのタイプによって固有の材料に応じて設計されている必要があります。硬いアクリルガードはグラインダーやチョッパーに適していると考えられていますが、柔らかいゴムガードはクレンチャーに適しています。
ただし、歯科医師は粗悪に作成されたマウスピースは問題を悪化させることを警告しています。
「歯ぎしりはしばしば呼吸や気道の問題に帰着します」とチェンは言いました。「ナイトガードはあくまでも絆創膏のような応急措置です。歯ぎしりをやめたい場合は、問題の根本原因を突き止める必要があります。」
引用元
https://www.nwaonline.com/news/2021/feb/22/fixing-your-dailygrind/
編集者注:この記事は情報提供を目的としたものであり、医学的アドバイスではありません。頭痛が持続し消えない場合は医師にご相談ください。
監修・まとめ
藤原 邦康
カイロプラクティック・オフィス オレア成城 院長
米国公認ドクター・オブ・カイロプラクティック
一般社団法人日本整顎協会 理事
1970年静岡県浜松市生まれ
カリフォルニア州立大学卒業
カリフォルニア州立大学(映画専攻)卒業後、CG映像の制作に携わった後、米国ライフウェスト・カイロプラクティック大学へ転進。2004年 米国ライフウェスト・カイロプラクティック・カレッジ卒業2006年 カイロプラクティック・オフィス「オレア成城」開院。2016年日本整顎協会設立。
顎関節症に苦しむアゴ難民の救済活動に尽力。噛み合わせと瞬発力の観点からJリーガーや五輪選手などプロアスリートのコンディショニングを行なっている。格闘家や芸能人のクライアントも多数。
【メディア取材】
「あさイチ」(NHK)、「とくダネ!」(フジテレビ)、「Tarzan」(マガジンハウス)連載、「BIGtomorrow」(青春出版社)、「長目飛耳」 (日経BP)、「からだにいいこと」(祥伝社)、「日刊SPA!」( 扶桑社)、「世田谷の頼れるドクター 信頼できるお医者さんに出会える本」(田園都市ドットコム)「セラピスト」( BAB出版社)「仕事&資格を手に入れる本」(リクルート)、「おはスタ」(テレビ東京)ほか
【執筆】
サライ(小学館)
「自分で治す!顎関節症」(洋泉社)Amazonベストセラー1位
「体の理を生かすカイロプラクティック」(科学新聞社)