歯科衛生士の職業病に対するカイロプラクティックの有効性

2022年5月4日
歯科衛生士の卵たちは、職業病にカイロプラクティック・ケアが有効かを知りたがっています。詳しくは以下の内容をご参照ください。

ミランダ・クーパー、BSDH(c)、 ミーガン ・ヘス、BSDH(c)、 モーガン・スリッピー、BSDH(c)、および レスリー・ハービソン、MS、RDH、EPDH

編集者注: 当記事は、オレゴン州パシフィック大学の3人の学生による最優秀プロジェクトです。

歯科衛生士の業務は見た目以上にハード

歯科衛生士学校に入学したとき、色とりどりのスクラブに身を包んだ自分の未来を描き、患者さんの健康的な笑顔をサポートできることをどれほど夢見ていたかを覚えていますか?一方、繰り返される日常的な体の苦痛や自分の体がいかに悲鳴を上げるかについてはほとんど知りませんでしたね?歯科衛生士は素晴らしいキャリアですが、あなたの体にダメージを与える可能性があります。体の負担や苦痛と無縁でいられる歯科衛生士は少ないですが、幸いなことに、役立つ可能性のある解決策と予防措置があります。

目次

MSD: 筋骨格系の障害

まず、苦痛や痛みとは具体的に何を示しているのでしょうか?答えは、専門職特有の筋骨格系の障害(Musculoskeletal Disorders: MSD)です。繰り返しの細かい動作や無理な姿勢でじっとしていなければならない職業はMSDに直結します。一般に、歯科従事者におけるMSDの頻発部位(1)は、首、肩、手首、手、および背中です。(2)

CTS: 手根管症候群

中でも、手根管症候群(CTS)は歯科従事者で非常に多く診断されるMSDの一つです。事実、歯科従事者は、米国の他のどの専門職よりも10倍もCTSを発症する可能性があります。(3)

新卒者として、私たちは私たち自身のキャリアにおいて、MSDとそれに関連する危険因子を防ぐのに役立つ方法についてもっと理解したいと思いました。危険因子は、生体力学的、環境的、心理社会的の3つのカテゴリーに分類されます。(3)

生体力学的な危険因子には、ハンドスケーラーや超音波スケーラーの使用などのタスクを実行するための毎日の機械的な動作や負担が含まれます。(3) Blake McGowanによると、反復動作、過度の力学的負担、無理を強いる姿勢、じっとしていなければいけない長時間の座位および立位などの姿勢は、歯科衛生士のMSDの主要な生体力学的な危険因子です。(4)

環境要因には、職場環境がどのように体に影響を与えるかが含まれます。(3)慢性MSDの可能性を高める新しい環境要因の1つは、コロナ感染拡大による影響が挙げられます。感染防止の保護具を着用することにより精神的ストレスが増大し、コロナ禍以前にはできていた行動も制限されました。(5)私たちの職場環境を改善できる可能性があるのは、機能的な臨床チェアや光照射器が含まれます。(3,5)

心理社会的危険因子としては、長時間診療や患者からの圧力など、私たちの感情や心理に影響を与える可能性のあるものが挙げられます。(3)

痛みを和らげるモダリティ

優れた人間工学を実践し職場環境を改善することに加え、私たちは苦痛を和らげMSDに関連する長期的な問題を防ぐための治療法を模索しました。中でも、カイロプラクティック・ケアは私たちにとって特に興味深いものでした。ドクター・オブ・カイロプラクティック(DC)は、主に筋骨格系とそれが神経系にどのように関係しているかに焦点を当てた医療提供者です。(6)

年間3,500万人がカイロ受診

アメリカ・カイロプラクティック協会(ACA)は、年間3,500万人のアメリカ国民がカイロプラクターによるケアを受けていると推定しています。(6)カイロプラクターが使用する最も一般的な治療アプローチの1つは、脊椎の緩和操作またはアジャストメントです。私たちがお話を聞いたカイロプラクターの一人であるDr. クレイグ・ゴンザレス DCによると、アジャストメントとは、手技または機器により制御された力によって関節と脊椎を元の形と機能に戻すことと定義されています。(6)様々な形態のカイロプラクティック・アジャストメントにより、患者は痛みの軽減、動きの増加、パフォーマンスの向上を経験します。

歯科衛生士の職業的リスク

繰り返し動作を伴うという職業柄、慢性的な痛みやMSDのリスクにさらされる可能性が高い歯科衛生士にとって、カイロプラクティック・ケアは体の負担を軽減するために有効である治療オプションの一つだと言えます。カイロプラクターは、歯科衛生士が痛みを経験する理由とそれを防ぐために何ができるかを理解しています。カイロプラクティック・ケアのプランには、姿勢の改善、診療の合間におけるストレッチ、定期的な運動なども含まれます。また、カイロプラクターは、関節マニピュレーション機器を使用して歯科衛生士の仕事中に日常的に発生する可能性のある再発症状を治療することもできます。

インタビューから学べること

歯科衛生士にとってのカイロプラクティック・ケアの利点に関する研究は限られているため、カイロプラクティック・ケアを受けたことがある、または現在カイロプラクティックを受診している経験豊富な歯科衛生士にインタビューを行いました。私たちは、歯科衛生士にとってのカイロプラクティック・ケアの利点や受診すべき理由を理解し、もしカイロプラクティック・ケアを受けるための存在する障壁があれば、それを特定したいと考えました。
MSDとカイロプラクティック・ケアの経験について、何人かの歯科衛生士に尋ねました。その一人は、手根管症候群(CTS)やその他の筋骨格系の問題により、2008年からカイロプラクティック治療を受けています。「カイロプラクティックによるアジャストメントを数回受けた後、本当に楽になりました。確実に痛みが軽減します。」と、彼女は述べています。

もう一人の歯科衛生士は、歯科衛生士専門学校以来、カイロプラクティック・ケアを受けてきました。彼女はなかなかカイロプラクティックに通うことができていないと言いますが、ちゃんと継続通院できていると、無痛でいられる期間が長くなります。

また、別の歯科衛生士は、カイロプラクターから治療を受けたものの、治療プランが長期的だと感じるため、理学療法を好んでいると話してくれました。興味深いことに、私たちがインタビューしたカイロプラクターたちはこの考えを支持し、長期的に及ぶ可能性があるカイロプラクティック・ケアの補助として理学療法を併用することを推奨しています。カイロプラクターたちは、歯科衛生士の特定の職務に関連するいくつかのストレッチを組み込むことを強調しています。これらのセルフケアは歯科衛生士の苦痛を軽減するのに大いに役立つ可能性があると述べました。

今回、二人のカイロプラクターに歯科衛生士への治療経験について話を聞きました。歯科衛生士を治療する際に彼らがアジャストメントを施す共通の部位を尋ねました。彼らは、肋骨の変位、胸筋の緊張、僧帽筋の緊張、肩甲挙筋の緊張、および上位肋骨と背中のかなりの可動制限について述べました。画像1は、カイロプラクターが変位した第1肋骨を正しい位置に調整して、正常な機能と可動域を回復する様子を示しています。画像2はローテーター・カフ(回旋腱板)へのマニピュレーションを示しています。図3は腰椎への脊椎マニピュレーションを示しています。(※著作権保護のため画像は省略しています。)

現在、カイロプラクターたちによって実践されている哲学がいくつかあります。私たちが行った調査とインタビューによると、必要なケアの頻度を減らしながら状態を改善することを目的として、MSDにアプローチする際の共通点が見つかりました。(6)あるカイロプラクターは、次のように述べています。症状の再発を防ぐために、自宅でできる簡単なセルフケアを患者に教えています。」

なぜカイロプラクティック・ケアを受けないのか?

私たちがインタビューを実施し文献を検証した結果によると、カイロプラクティック治療は歯科衛生士に恩恵をもたらし、職業寿命を延ばす可能性があることは明らかです。にもかかわらず、歯科衛生士がカイロプラクティックを試すことをためらう理由として最も言及された障壁は、マニピュレーションに対する不安と継続通院が長期に渡る可能性でした。

ある歯科衛生士は、背中を押す調整法によって、かえって問題が起こるのではないかと感じ、またカイロプラクティック・ケアへの長期的な依存につながるのではないかと不安に感じていました。彼女は関節が弾ける音が怖いとも述べています。別の歯科衛生士は同僚に「優れたカイロプラクターであることを事前に調べてください。」とアドバイスしました。

特に、首へのマニピュレーションを恐れて、カイロプラクティック・ケアを避ける人もいます。ACAは、首の操作は非常に安全であると述べています。稀に最大24時間ほど痛みを感じることがありますが、ほとんどの患者はカイロプラクティックによって痛みを和らげて退院します。(6)不安に思うのは分かりますが、あなたの話にしっかり耳を傾けあなたの症状を十分に理解してくれるカイロプラクターを見つけて信頼関係を築けば、不安は解消されます。

カイロプラクティック・ケアに対するもう一つの一般的な障壁は、金銭的な理由です。カイロプラクティック・ケアは、保険会社によって必要なケアであると認められない場合があり、雇用主が提供する医療給付にはカイロプラクティック治療の補償が含まれない場合があります。

カイロプラクティック・ケアの恩恵

カイロプラクティック・ケアはMSD予防によって安心をもたらし、多くの歯科衛生士にとって現実的な選択肢となる可能性があります。私たちの研究は、歯科衛生士がMSDを経験した場合、信頼できるカイロプラクターを見つけることによって生活の質を改善し、職業寿命を延ばすことができると結論付けました。

この記事によって、歯科衛生士の身体に対するカイロプラクティックの恩恵について理解するのに役立つことを願っています。また、カイロプラクティック・ケアを受けることを妨げている不安を和らげるのに役立てば幸いです。私たちのインタビューから、歯科衛生士にとってカイロプラクターが役立つことは事実であることが十分に結論付けられました。

参考文献
1. Hawk C, Whalen W, Farabaugh RJ, et al. Best practices for chiropractic management of patients with chronic musculoskeletal pain: A clinical practice guideline. J Altern Complement Med. 2020;26(10):884-901. doi:10.1089/acm.2020.0181

2. Malloy L, Boyd LD, Adams JL, Vineyard J. Quality of life in dental hygienists using complementary alternative medicine approaches for work‐related musculoskeletal disorders. Int J Dent Hyg. 2021. doi:10.1111/idh.12549

3. Netanely S, Luria S, Langer D. Musculoskeletal disorders among dental hygienists and students of dental hygiene. Int J Dent Hyg. 2020;18(2):210-216. doi:10.1111/idh.12428

4. McGowan B. Biomechanical risk factors for musculoskeletal disorders: What’s new? EHS Today. Published online 2016. Retrieved October 10, 2020. https://www.ehstoday.com/health/article/21917752/biomechanical-risk-factors-for-musculoskeletal-disorders-whats-new

5. Gandolfi MG, Zamparini F, Spinelli A, Risi A, Prati C. Musculoskeletal disorders among Italian dentists and dental hygienists. Int J Environ Res Public Health. 2021;18(5):2705. doi:10.3390/ijerph18052705

6. ACA Hands Down Better–American chiropractic association. What to expect on your first visit. Accessed April 5, 2022. https://handsdownbetter.org/about-chiropractic/what-to-expect-on-your-first-visit/

〔※編集注:この記事は情報提供を目的としたものであり、医学的アドバイスではありません。個別のケースにつきましては医師にご相談ください。〕

監修・まとめ

藤原 邦康
カイロプラクティック・オフィス オレア成城 院長
米国公認ドクター・オブ・カイロプラクティック
一般社団法人日本整顎協会 理事
カリフォルニア州立大学卒業
カリフォルニア州立大学(映画専攻)卒業後、CG映像の制作に携わった後、米国ライフウェスト・カイロプラクティック大学へ転進。2004年 米国ライフウェスト・カイロプラクティック・カレッジ卒業2006年 カイロプラクティック・オフィス「オレア成城」開院。2016年日本整顎協会設立。
顎関節症に苦しむアゴ難民の救済活動に尽力。噛み合わせと瞬発力の観点からJリーガーや五輪選手などプロアスリートのコンディショニングを行なっている。格闘家や芸能人のクライアントも多数。

【メディア取材】
「あさイチ」(NHK)、「とくダネ!」(フジテレビ)、「Tarzan」(マガジンハウス)、「からだにいいこと」(祥伝社)、「日刊SPA!」( 扶桑社)、「おはスタ」(テレビ東京)ほか

【執筆】
サライ(小学館)
「自分で治す!顎関節症」(洋泉社)Amazonベストセラー1位
「体の理を生かすカイロプラクティック」(科学新聞社)”

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